中国および京津冀地域における環境規制と企業の対応

ジェトロ・北京事務所より【中国および京津冀地域における環境規制と企業の対応】の調査レポートが配信されました。

前半は詳しい法令や処罰の統計など書かれていますが、後半の「環境処罰と企業対応」では日系企業としてどのように対応すべきかなど書かれています。

出典:https://www.jetro.go.jp/world/reports/2019/02/4db7ee91fe5509f7.html

以下、気になったポイントを抜粋します。

処罰による波及効果として、マスコミ報道、環境 NGO の不買運動、信用低下で融資困難、株価低下、取引先減少、周辺住民の苦情などの動きも起こり得るため、注意が必要である。

日系企業への影響としては、地方役人の態度が変わり、環境規制への対応を厳格に求めるようになった。またサプライチェーンが寸断、経営を圧迫するようになった。

3-1-7.なぜ日系企業が環境処罰されるのか

・環境管理を行うのが現地職員

日本人駐在員で環境管理が分かる人が少ない

・中国環境制度の特殊性を理解していない

中国の急激な変化に追いつけない

企業側としては、当局の立入検査、担当者への審問、担当者への告知の各段階で当局の動きを把握できるはずである。ただしこの段階の情報は環境部内で留められ、処罰決定後に初めて経営層に報告されるケースが多い。これにより対応が後手に回る。このためできるだけ早期に当局の動きを把握して対策するのが望ましい。

3-2. 昨今の環境規制に対応するための日系製造業の留意点

②自社の環境対応の実態把握

③本社側からの環境対応サポート

各社は ISO14001 管理の一環として環境規制情報を収集・管理しているが、漏れがあるケース、更新されていないケースが多い。環境規制情報について、自社に都合のよい解釈をしているケースもみられる。一つの法規をみるだけでなく、体系的な理解が望ましい。罰則から読みと強制規定を早く把握できる。環境規制の日本語への翻訳で意味がゆがむケースもある。社内の通訳は一般に環境専門外であるためである。

自社の実情把握が企業環境管理の基本中の基本であるが、これは意外に難しい。環境担当ローカルスタッフに任せていて、環境管理の実態は日本側からブラックボックスになっているケースが多い。長期駐在の日本人は経営層・生産管理が主であり、環境管理が分かる人は少ない。また本社や地域統括会社から環境専門職員が監査診断に来るも、現場に緊張感を持たせる効果はあるが、中国の制度・やり方への不理解や言語の問題から、効果的監査ができないケース
が多い。

法令順守では「自己満足、思い込み、自社に都合よい解釈、日本の対策で十分」に要注意であり、法令基準より厳しめの自社管理基準を運用することで予防できるほか、専門的な第三者企業による監査診断/指導が有効であると思われ。なおローカルの環境コンサルティング会社は主に、環境アセスメント、排出許可証など環境手続きに限られるケースが多い。 よくある誤解として、「ISO14001 取得済み、当局の立入検査の指摘に対応済み、日本式管理を導入した、環境投資が多額であるため、対応できている」という日系企業でも環境処罰事例が相次いでいる。ISO14001 はあくまで社内環境管理システムの運用状況に焦点が置かれており、環境法令順守はそのうちのごく一部でしかなく、環境法令順守を担保するものではない。

3-2-5.本社側からの環境対応サポート

本社側からの環境対応サポートとして、正しい危機感を持ち、人的、資金的、知識的にサポートすることが重要である。その際に、次の点に留意する必要がある。

現場の環境管理は、環境専任日本人がほぼいないため、環境担当ローカルスタッフに任せることになるが、完全に任せきりだと「なあなあ」が積み重なる。環境担当ローカルスタッフの性格・知識・能力を把握しておく必要がある。環境部門は少人数で特殊な専門性が求められるため、社内他者からのチェックが少なく、トラブルのもとになりやすい。現地職員の知識・能力に不安な場合、日本の熟練職員や外部第三者コンサルタントを派遣して時々チェック、講習するのがよい。環境担当は往々にして孤立しがちであり、横のネットワークを作るよう支援するのが望ましい。ローカルスタッフは眼前の業務対応に集中しており、全体像、意義、技術原理など理解していないスタッフが多い。

性悪説に基づきクロスチェックできる体制を作るのが望ましい。

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