【中国】VOC対策は急ぎ対応が必要! 活性炭による対策は承認せず

ジェトロ(JETRO)ニュースレターの2015年11月上期号が先ほど配信されました。

その編集後記には、私が以前よりブログでVOC対策は急ぎ対応が必要だとお伝えしていた事を、ジェトロ(JETRO)さんも正式に配信されましたので、以下にその内容をお伝え致します。

ΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨ  編集後記  ΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨΨ

立冬を過ぎ、冬の訪れを感じる気候になってきました。体調を崩さないように気
を付けて行きたいところです。

さて、今回は、揮発性有機化合物(VOCs)の固定発生源からの排出規制につ
いて、気になる動きがありますので、御紹介させて頂きます。

(PM2.5対策としてのVOCs排出削減規制の本格開始の動き)
PM2.5に象徴される環境対策が政府の重要政策となっているのは御承知のとお
りです。本年1月より、改正環境保護法が施行されたのに続き、2016年1月には改
正大気汚染防治法が施行されます。中国共産党第18期中央委員会第五回全体会議
(五中全会、2015年10月26-29日)でも、第13次5カ年計画(2016-2020年)に
向け、「グリーン発展、資源節約と環境保護という基本政策、持続可能な発展を必
ず堅持しなければならない」として、五大発展理念(ノベーション、協調、グリー
ン、開放、分かち合い)の一つとして掲げられています。

特に、2015中国国際工業博覧会(11月3-7日)の会期中に開催した「大気汚染
防止政策及び測定処理技術セミナー」(11月6日)には、上海市環境保護局汚染防
止処長、上海環境科学研究院行程技術中心工程師ほかからの講演において、PM
2.5対策のための力点をVOCs対策においていることが強調されました。

上海市では2014年には150社が重点企業として、2015年には2000社が削減対象
企業としてリストアップされ、2015年内!または2016年内の処理設備導入等が求
められており、リスト企業以外を含め、実際に複数の日系企業様から当局からの削
減実施指導を受けているとの声をお聞きしております。さらに、当局との意見交換
の中で、最初の削減警告期間(2週間後のことも!)までに対策が取れていなけれ
ば停止措置を講ずることもあり得るとの発言があったとの話までお聞きしています。

また、同様の動きが蘇州工業園区でも対象企業のリストアップがあり、2015年
内の対策を迫られているとの声をお聞きしております。処理設備導入に加えて、処
理設備の入口と出口での濃度等の測定・テレメータでの当局への送付なども具体的
に求められているとのことです。

こうした動きがどこまで広がっているか不明ですが、PM2.5の削減目標の達成
が地方政府指導者にとっても至上命題となる中、今回のVOCs規制は、当局の指
導も相当徹底した対策を求めてきているとの印象を強く実感する話が数多く聞かれ
ます。

個人的な見方ですが、既にリストアップ企業となっている方、まだ、特に話はき
ていないがVOCsを利用されている方にとっては、以下のような視点にも御留意
頂ければと存じます。

(VOCs固定発生源対策の日本の取組との相違点)
先ず、第一印象としては、VOCsの固定発生源対策は日本とは異なる意味合い
を持ち、異なる力点が置かれているとの印象です。

PM2.5による大気汚染問題という、目に見える分かりやすい現象によって、環
境意識が高まり、中国政府としても、環境対策効果を上げることが経済成長と同等
の重要課題となっています。

環境問題については、日本も地域的な公害への対策として、1970年代より、排水、
排気中の原因物質の削減対策の導入から順次始まり、各種の環境コストを規制に
よって負担する手法が取られてきましたが、固定発生源からのVOCs対策につい
ては比較的遅く2000年代での規制導入であり、かつ、大規模発生源への規制的手法
とその他発生源での業界毎に実態にあった自主的目標による自主管理的手法をミッ
クスする形が採用されました。

これは、PM2.5対策のための固定発生源からのVOCs排出抑制については、
(1)PM2.5の原因となる自然由来の粒子、煤煙等の粒子、SOx、NOx、VOCs
等による2次生成物としての粒子などの複合的かつ複雑なメカニズムを有するため、
VOCsの削減によるPM2.5低減効果が不透明である中での対策であり、(2)洗浄
工程、塗装工程、印刷工程、成形工程等、極めて幅広い産業分野で、多種多様な使
用形態の下で、効果的かつ費用対効果の高い削減対策も極めて多様である中、社会
的に見た経済合理性を考慮して、規制的手法と自主管理的手法とを組み合わせる形
態が採用されたものと言えます。

その意味では、日本は、「大所はしっかりと押さえるが、小規模排出源について
は、自主目標に基づきできるだけ減らす」という形を採用したとも言えます。

一方で、中国では、世界的にも「厳しい排出基準」の達成を「短期間」で求めて
おり、モニタリング、罰則等とも相俟って、規制的手法を厳しく適用する形を採用
しています。そのために必要となる各種の地方標準等も順次策定されています。

とりわけ、「複合原因を有するPM2.5濃度を結果として低下させる」ことに向
け、複数要因を網羅的に取り上げる中でも「VOCs対策に相当な力点」が置かれ
ていますので、相応の対策コスト負担は避けられないと覚悟する必要がありそうで
す。

(VOCs対策導入での課題)
この際、特に注意が必要な点として、自主管理手法でなく規制的手法が全体的に
採用されていることから、VOCsを利用している工場では、“日本でも経験した
ことがないような排出基準を達成するための処理”を求められることまで想定する
必要があるということが挙げられます。

中国政府(地方性法規を含む)が求める政策を良く踏まえ、処理設備導入に当
たっては、自社の排出する濃度、流量等に応じて、規制値達成と経済性を長期的に
両立させられる処理設備であるかどうか、しっかりと見極める必要があります。

VOCs対策を導入するに際し、上海市環境保護局からは、法規制、基準、標準、
規範等を示しているが、実際の処理設備の導入については、民-民の市場原理に基
づく決定に委ねており、仮に特定業者や特性設備の推薦等があったとしても、基準
等を満たす限りにおいて、選択は企業次第とのコメントがありました。

この意味では、規制当局からの指導の際に推薦された業者の設備をそのまま導入
することで良いのか、「実際には規制値を下回らない」「ランニングコスト・メン
テナンスに想像以上のコストがかかる」といった後悔をしないためにも、自社で
しっかりと検討・判断することが必要になってくると思われます。場合によっては、
成形機で樹脂色の切り替え時の洗浄でVOCsを使うだけなど、対策が難しいケー
スもあり、処理設備の専門的知識を持ったところとの相談が必要となる場合もある
と思われます。

同時に、留意すべき点として、中国の環境政策では、合同能源管理など、第三方
機関を用いた管理方式が基本の考え方にあるということが挙げられます。この管理
方式では、政府は、専門知識を持った第三方機関を認定し、各企業は第三方機関に
よる評価・計画立案・対策導入・検査等を受け、第三方機関が対策効果に対して責
任を持って政府に報告する形を指します。この第三方機関を用いた管理方式につい
ては、規制当局である政府と規制される側の企業の間に認定された専門家を介在さ
せるという意味では、会計監査法人による監査と同じようなものだと理解すれば分
かりやすいかも知れません。

特に、5中全会の文書では、第13次5カ年計画において、省エネにおける合同能
源管理に加え、排水でも第三方機関の利用を行うようにとの記載も見られ、上海市
ではVOCs規制でも第三方機関による正式手続きを経ておかないといけないとの
情報があるとの話もお聞きしたことがあります。

この意味からは、自社の独自判断をしっかり行ったとしても、自社判断だけで導
入した環境対策については最終的に政府が求める対策を取っていると認められない
ことがあり得るとのリスクについても留意が必要です。後々になって政府からの追
加対策を求められるリスクがあるという将来的なリスクを孕む可能性も考慮した進
め方まで考える必要がありそうです。

なお、上海市環境科学研究院からのプレゼンでもありましたが、そもそもVOCs
排出削減対策には、大きく3段階があると言われています。

第一段階:原材料のnon-VOCs化(水系塗料・接着剤への転換など)
第二段階:プロセスの転換(密閉化・VOCs回収など)
第三段階:(第一、第二ができないときの)出口での処理

処理コストが膨大となる場合には、第一段階、第二段階での対策を検討すること
も必要になる場合もあると思われます。

こうしたことを考え合わせると、日本以上に厳しい規制が始まっている現実を踏
まえた対応の観点からは、まだリストアップされていない段階から、
“前以って”
“(日本と同等でも不十分かも知れない)中国法規を踏まえ”
“第三方機関による正式手続きを経つつ”
“第一から第三段階をトータルに勘案して”
“自社に合う対策を検討・導入する”
という視点を持って、短期間での(気に沿わない)処理設備導入に対応しなければ
ならなくなるリスクを避けることも選択肢に入ってくると思われます。

(環境保護税、排出量取引等の動き)
こうした規制的手法による強制的な処理設備導入以外にも、気になる動きとして、
環境保護税のパブコメや排出量取引の試験的導入など、動いています。

環境保護税は、これまで環境保護費として環境保護局に支払っていたものが税務
当局による徴収に代わるというだけとも言えますが、排出量に対する係数などの計
算方法や税務当局による厳密な再計算など、環境コスト負担が増加するリスクも孕
んでいると思われます。

また、中国では、排出基準を満たしただけでは足りず、総量規制による排出枠設
定もされる中、より削減した場合に排出量取引で排出枠を販売したり、排出枠を越
えた際に排出量を購入することで経済的に解決したりすることも試験的に始まって
います。

まだ、これらの制度がどのように定着していくのか不明ですが、リスクマネジメ
ントの観点からは、各地域での最新情報入手に努めるとともに、こうした動きまで
勘案して、前以って対策を検討・導入していくことも考慮しても良い時期に来てい
るかも知れないと感じます。

(環境ビジネスの観点)
リスクマネジメントで足元を固めることと同時に、チャンステイクの視点からは
環境ビジネスが改めてビッグチャンスが来ている可能性もあります。

まだ、実際の各地域での運用が読み切れないため、「可能性」の議論かも知れま
せんが、全ての企業が環境コストを負担する枠組みが徹底されれば、これまでイニ
シャルが高く敬遠され勝ちな面もあった日系企業の技術・製品が、ランニングコス
トを含めたライフサイクルコストや経験・実績に裏付けられた実効性から、再評価
されてもおかしくないと考えられます。

VOCs対策の観点で見れば、第一段階での水系塗料・接着剤等への転換を促す、
第二段階でのクローズド化プロセスの導入を促す、第三段階での処理装置の効果・
ライフサイクルコストをPRする等、様々なビジネスチャンスが想定されます。

また、考えようによっては、様々な形での環境コスト負担を顕在化させる仕組み
が徹底されるのであれば、VOCsの排出を削減することで規制対応ができたとい
うだけでなく、環境保護税を削減できた、排出枠を販売できた等の追加的な経済的
価値についても遡及できるようになる可能性もあります。

(おわりに)
VOCs規制による事業活動へのマイナス面、プラス面の両面から、インパクト
は小さくないものと思われますので、御参考にして頂けますと幸いです。また、必
要に応じジェトロ上海事務所に御相談頂ければと存じますし、各地での情報につき
ましても、是非お寄せ頂けますと幸いです。

ジェトロ上海事務所次長 蘆田 和也

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注意すべき点は、上海市環境科学院では活性炭によるVOC除去は認めなくなったと言う点です。

これは長三角地区(上海、江蘇省、浙江省)は基本的に同様の動きになる事を意味します。

安易な対策は更なるトラブルの基になりますので、JETROニュースに記載あるように専門の外部業者へ委託して下さい。

リンク188

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