以前よりずっと警笛を鳴らし続けておりますが、次から次へと日系企業の環境法令違反情報が舞い込んできています。
当社が以前にご相談を受けた企業も暮れの12月に摘発情報が公開されましたが、この会社の結末は当初よりわかっていました。
上海市松江区にある日系大手の印刷企業ですが、2015年の夏頃には排気設備の不備が指摘されており、当社も相談を受けてお伺いした経緯があります。

上海市松江区公開情報:http://hbj.songjiang.gov.cn/sj_hjbhj/hjbhjdpage/GovInfoPub/Default.aspx

総経理は設備関連の事は現場に任せる方針でしたが、工場長は赴任されて日が浅く、古くより在籍するローカルスタッフの意見を尊重するしかないような体制でした。
当社は100社以上の日系工場を訪問しておりますので、伺った時にはローカルスタッフが真面目な方なのか、または悪い方なのかは一目瞭然ですが、この会社の場合は後者の方でしたので、総経理には体制をまずは至急変えなければ上手く進めれないと提言しました。
しかし、総経理は「工場長に任せているので」との姿勢を変えれませんでしたので、当社はそれ以上関わる事はありませんでした。
その後、この会社はローカルスタッフが推す設備を導入しましたが、導入された設備は環境基準をクリアできず、再度設備を入れ直すしかないような状況に陥りました。
この時に導入された設備も1000万元以上と伝え聞いておりますので、日本円で1億7千万円以上のゴミを買ってしまった事になります。
現在は大きく操業にも影響が出ているようで、損害額は設備の損害にとどまらず、膨大な額となるのでしょう。
※直近の1年で、内部体制の問題で環境改善が困難である事をご指摘した企業にて、当社へサポートをご依頼されなかった企業の約8割が、その後に環境法令違反で摘発されています。
同様のケースが非常に多いのですが、なぜこのような結果になるのか、その根底にある問題を解決しなければ、今後も同様なケースが多発するのでしょう。
はっきりと断言できますが、一番の問題は「商業賄賂」など、担当者の不正が全ての問題の根底にあります。
環境改善を指摘された企業が、よく「役所より業者を紹介された」との話がありますが、多くは担当者が作ったねつ造話です。
日系企業の場合、どうしても担当行政とのやり取りはローカルスタッフが窓口になっており、日本人が直接やり取りする事は非常に少ないように思います。
この隙をついて、あたかも役人から業者を紹介されたと言うねつ造を行うわけですが、お人好しと言うか、日本人はそのまま信じてしまうケースがほとんどです。
実際はローカルスタッフが深く関わる業者に仕事が発注されてしまう訳です。
今後、「役所より業者を紹介された」と言う場合には、それを伝えてきた担当者に「では、直接話を聞きたいので、面会の約束を取って欲しい」と伝えてみてください。
ほとんどの場合、この切り返しで担当者の話が曖昧になります。
仮に実際に役人と会う事になった場合には担当者以外の通訳を入れ、日本人が直接役人に「指定された業者でなければいけないんですか?」と聞いてみてください。
今の時代、「そうです、指定した業者でやってください」と言う役人はいません。こんな事を言ってしまったら、役人自身の身が危うくなるからです。
環境改善や省エネなど設備に関する作業では非常に大きな金額が動きますが、それに対しての外部専門家による監査体制などが日系企業ではほとんど取られておりません。
購買や財務部門での不正も同様に多くありますが、この点についても日系企業は対策が後手になっています。
密告などにより不正が明らかになってから、慌てて弁護士事務所などへ相談に行かれますが、それでは既に時遅しです。
某日系企業で最近実際にあった事例ですが、外部専門家により監査したところ取引先のうち実態の無い会社が数十社あったようです。
架空取引が行われていた訳ですが、日系の多くの企業はローカルスタッフが実務を行っており、監査体制が無いまま任せてしまっているケースがほとんどです。
「不正をしてください」、と言ってもいいような体制なのでしょう。
このような問題により会社の利益が抜き取られる訳ですが、最近では少しづつではありますが、このままでは駄目だと気付いて外部専門家に依頼して改善に取り組む企業も徐々にではありますが増えてきました。
ただ、中国現地法人側の責任者では、その決断がなかなかできません。
と言うのも、外部監査を入れる事により、今までの管理不備による不正が発覚するからであり、それは自身の管理能力の欠如を同時に明らかにしてしまうからです。
とりあえず、発覚しないよう臭いものには蓋をして、自身が帰任になるまでは触れないでおこうと思っている現地総経理が多いのではないでしょうか。
設備部門、購買部門、財務部門などへの外部専門家監査は本社側が主導しなくては進みませんので、本社側が主導してグループ企業の改善に取り組んで欲しいものです。
当社は環境・省エネなどに特化した事業を行っておりますので、その分野の監査などは行っておりますが、財務、購買などは当社では対応していません。
財務、購買などの外部監査については、当社が懇意にしている上海良図商務諮詢有限公司(LTグループ)がご専門にやられておられます。
LTグループ代表の郁偉さんは日本の大学へ留学され、その後は日本の大手都銀に勤務された後にLTグループを創設されました。
LTグループ:http://www.lt-shanghai.com/jp/index.php
LTグループ内部統制事業の紹介:http://www.lt-shanghai.com/jp/service_supervise.php
実績豊富で確実に成果をあげられていますので、安心して依頼できる会社でしょう。
いずれにしましても、中国現地法人の運営は自社内部だけの管理体制では困難な状況であり、テーマごとに外部専門家を活用して速やかに改善するべきでしょう。
