中国環境規制は成功するのか

昨日(2018年5月29日)、JETROより「中国環境規制は成功するのか」と言うタイトルで、2件レポートが配信されました。

(1)社会信用が企業の環境順法意識を育成 ⇒ https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/e2659b16d8b6d8b3.html

このレポートでは、私が副センター長を務める同済国際緑色産業創新センターのセンター長でもあります、同済大学緑色建築及新能源研究中心:譚洪衛教授のコメントも以下のように書かれております。

同済大学緑色建築及新能源研究中心の譚洪衛教授は筆者の質問に答え、中国の環境規制強化について「中国政府は、過去『単に経済発展に偏り環境悪化を招いた』教訓から、本格的な環境規制強化を始めた。それは今までと違って、法令整備だけではなく、法令の実行力が重視され、効果を強く求めるようになった。これらの動きはもはや外部からの圧力ではなく、中国社会自身の持続発展および世界への貢献のためだと真剣に考えたもので、勇気ある行動だと思う」と高く評価した。

(2)相互監視の徹底が環境規制の最大の推進力に ⇒ https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/e81c33696a92daca.html

こちらは環境規制強化によるサプライチェーンの問題について書かれています。

すでに大きな話題となりましたが、昨年上海にて起きたドイツのシェフラー事案についても以下のように書かれています。

9月18日にシェフラー側が緊急書簡を公表した。「自身のサプライヤーが環境保護違反によって生産停止を受け、自動車生産台数300万台・3,000億元の経済損失が生じる」とし、3カ月の刑の執行猶予を求めた。その2日後の20日に上海市浦東新区環境保護局は反論した。「サプライヤーは9カ月前から警告を出されており、シェフラーと生産調整が可能であった。シェフラーはサプライヤーの環境保護法への合法性を確認すべきである。政府は環 境違法企業に絶対に譲歩しない」と一切の妥協をしなかった。この事案から、「経済よりも環境重視」「大企業はサプライヤーの環境保護違反を確認すべき」との中国政府の厳しいメッセージに注目が集まった。当地に進出する日系企業にとっても、内販拡大のためにコスト削減を目的に現地調達を進め中国企業との取引を拡大している企業が多く、そのような企業にとってもシェフラー事案は決してひとごとではないであろう。

この事案でのポイントは、サプライヤーの環境保護法への合法性を怠ったシェフラーに対して政府は一切妥協せず、「大企業はサプライヤーの環境保護違反を確認すべき」との認識を示した事でしょう。

最近はサプライヤー管理に関するご相談が急増しており、日系企業各社も危機感を持たれている事がうかがえます。

中国の環境規制強化 日本企業に摘発の波

昨日(2018年5月28日)、日経新聞の朝刊11面に私のコメントが掲載されました。

出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30893740U8A520C1TCJ000/

かなり大きな紙面を使っての記事でしたが、日系企業の現地法人と本社とのコミュニケーション不足や管理体制の問題により、様々な障害が起きている事が書かれています。

日本では今まで報じられていなかった、トヨタなど大手企業の環境法令違反についても書かれており、インパクトのある記事となったのでしょう。

私のコメントは、以下のように紹介されました。

 中国で環境コンサルティングを手掛ける上海清環環保科技(STECO)の清水泰雅代表は「日本の本社は『しっかり対応せよ』と指示するだけで、具体策は中国の現地法人に委ねるという企業が目立つ」と話す。「急速な規制の強化に対応するには手間やコストもかかる。本社が積極的に関与しなければ無理だ」

 清水氏は「中国の規制はずさんだとか、環境対応は日本が一番だ、といった思い込みが対策の遅れを招く」と指摘する。

最近、現地管理者の方からお聞きする話で問題と感じる点は、本社の中国担当役員にいくら現状の問題を話しても、まったく理解してくれないと言う嘆きです。環境規制強化といっても、所詮はお金を払えば何とかなるのではないかと思っており、古い中国感から抜け切れていない人たちが本社管理部門にいる事が大きな障害となっています。

現状を第三者などにより客観的に精査し、何が正しいのかをまずは把握する事が重要です。

進出時のDD(デューディリジェンス)だけではなく、すでに進出10年以上の事業所については現状のDDを改めて行う事をお勧めします。

この時に気を付ける点は、製造現場を熟知した専門家によるDDを行わなければ意味が無いと言う点です。

優秀な弁護士さんなども多くおられますが、正直なところ製造現場に精通している弁護士さんは多くはおられません。

机上の理論では解決は難しいでしょう。

習近平氏、全国生態環境保護大会で重要演説

5月18日、19日に全国生態環境保護大会が北京で開催され、習近平中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は大会に出席し、重要演説を行いました。

日本語ニュース ⇒ http://jp.xinhuanet.com/2018-05/19/c_137191549.htm

中国語ニュース ⇒ http://www.xinhuanet.com/2018-05/19/c_1122857595.htm

重要な発言について、まとめてみました。

①生態文明建設に対する意義の解明はより一層強い:

「十九大報告」には、生態文明建設は中華民族の永続的発展に関わる「千年大計」から「根本大計」に上昇する。

②十八大以来、生態文明建設に3つの単語で肯定した:

歴史的、転換的、全局的な変化が発生していた。同時に、生態環境の質が継続的に好転し、安定さの中でよいほうへ向かう傾向があるが、効果がしっかりではないと指摘する。

③生態文明建設の現実状況について三つの判断:

重圧で巨大な試練に直面する重要な時期にある、人民より日増しに強まっている美しい生態環境に対する需要を満足する正念場を迎える、突出した環境問題を解決する能力や条件があるウインドウ期にたどり着いた。

④新時代の生態文明建設推進に6つ原則を提出する:

1 人間と自然との調和的共生

2 豊かな自然は金銀ほどの価値がある

3 良好な生態環境があまねく恩恵のある民生福祉

4 山水林田湖草は生命共同体

5 最も厳格な制度及び法律で生態環境を保護する

6 グローバル環境文明の建設を連携で実現する

⑤生態文明建設に5つの要求を提出する:

生態文明システムの構築を加速する

グリーン発展を推進する

突出した生態環境問題が民生問題に優先させる

生態環境リスクを有効的に防止する

環境改善のレベルを高める

⑥健全な5つ生態文明体系構築の加速を強調:

生態価値観を原則とする生態文化体系

産業生態化及び生態産業化を主体とする生態経済体系

生態環境の質の改善を核心とする目標責任体系

改善体系や改善能力の現代化を保障とする生態文明制度体系

生態系統の良性な循環及び環境リスクに対する有効な防止を重点とする生態安全体系

⑦最後に、生態文明建設は党の指導を強化する必要性を強調した。

地方の各級党委員会及び政府の主要な指導者は、当地域における生態環境保護の第一責任者である。

以上

尚、次の点も注視すべき発言となります。

生態文明システムの構築を加速し、2035年までに生態環境の質の根本的好転、美しい中国の目標の基本的実現を確保する。

生態環境を損害した地方幹部に対して、終身責任を追究する。

関連ニュース:https://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2018/05/213654.php

[上海 22日 ロイター] – 中国証券監督管理委員会(証監会)は、上場企業に環境面での責任をさらに果たすよう促し、グリーンファイナンス(環境金融)を推進、新規株式公開(IPO)や企業合併の審査で環境問題をより重視する方針を明らかにした。

2017年度 上海市における環境執法状況統計

1.処罰案件及び金額の比較

 図1.処罰案件推移

 図2.処罰金額推移

結論:2017年、上海市における、環境違法案件数及び処罰金額は2015年や2016年より、大幅に増加する傾向が顕著。2016年と比べると、件数と金額はそれぞれ35%90%増加した。

2.重大環境違法案件数の比較

結論:上海市に於いて、2017年日割りで連続処罰案件は2016年と比べると5倍ほど急増した。公安機関へ移送した案件(環境犯罪)も倍の増加になった。

3.環境違法の分野別比較

結論:案件分野で分析すると、「建設プロジェクト三同時」を違反した案件数は半分以上を占めた。

結論:2016年と比較すると、建設プロジェクト環境影響評価の関連案件の比例が少し減少した。その他、総量規制の案件比例が増加した傾向がある。

データ出典:上海市環境保護局

過去のブログを振り返り

連休中に古いブログを読み直してみました。

2015年4月7日にNHK BS1 「キャッチ!世界の視点」で当社の事が放送された事を思い出しました。

2015年4月7日のブログ → http://steco-blog.com/shimizu/date/2015/04/07

2015年4月のこの時から、罰則の強化を示唆しています。

当社総経理の江頭(えがしら)もコメントしています。

事業所が抱える環境問題は多義に渡り、一つの設備や技術で解決はできない。

事業所側は全ての問題をまとめて解決してくれる事を望んでいるが、環境対策ビジネスをしている日本企業はそれぞれが単独で活動しているために、現地ニーズを的確に捉える事ができていない。

このような発言をしていますね。まさしく、その通りなんですが、こういった問題を解決するために当時より当社は日資企業節能環保推進研究会と言う組織を立ち上げて現在に至るまで活動を続けています。

毎月定例会を開き、最新環境情報の情報共有や日本企業どうしの連携を強める活動をしています。

日資企業節能環保推進研究会HP → http://energy-saving.support/

2020年までは規制強化が一段と厳しくなっていきますので、ビジネスチャンスも拡大していきます。

ただ、どこに対してどのような体制でビジネスを行うかの戦略ポイントを間違えば、折角のチャンスも逃してしまう事になるのでしょう。

法令・法規、市場動向をしっかりと分析すれば、自ずと方向性は定まります。

現地最新の状況を把握せず、日本に於いて自社の売りたい製品や技術だけの事を考えているようでは永遠に道は開けないのでしょう。

【中国】蘇州にてセミナー開催

5月10日に蘇州にて開催されますLTグループ主催のセミナーにて当社総経理の江頭が講演させて頂きます。  環境 規制 セミナー 日系

テーマは「環境対策の強化により、操業停止に追 い込まれるリスク回避」となっており、環境対策の強化により、操業停止に追い込まれるリスク回避(2018両会 から見えてくる政策と企業の取るべき対策)の内容にて講演を行います。

【中国】合同節水管理による排水のリサイクル

中国全土で水の総量規制が加速しており、生産事業所では今までのように水が使えなくなってしまう恐れが増えてきました。また、事業拡張などで生産工程を増やそうと思っても「水」使用の制限が厳しくなってきており、事業計画にも影響を及ぼしています。

江蘇省の太湖周辺地域などでは既に厳しい水の総量規制が始まっており、進出している日系企業も対策を急がなくてはならなくなっております。

当社ではすでに「合同節水管理」方式にて排水のリサイクル事業を展開しておりますが、中国ならではの優遇政策もある関係で最近はお問い合わせが急増しており、今後は需要が大きく伸びると予測しております。

以下で実際に合同節水管理を行っている事例をご紹介します。

初期投資無しで排水のリサイクルが可能です。

「合同節水管理」方式は、日本で省エネで活用されているESCO(エスコ)方式を節水に応用した中国独自の仕組みです。

水の総量規制などでお悩みの事業所は、ぜひご相談ください。

【中国】ジェトロ上海ニューズレター2018年3月下期号

本日、ジェトロ上海ニューズレター2018年3月下期号が配信されましたが、3月21日に開催され当社の江頭総経理も講演させて頂きました「中国華東地区の環境規制対策セミナー」の講演資料を公開してますので、ご紹介致します。

・セミナー資料の公開

1)「中国華東地区の環境規制対策セミナー」
(3/21 於:上海国貿ビル、開催済み)
以下のURL使用した一部の資料をダウンロードできます。

1.「中国環境問題の現状」
ジェトロ上海事務所 経済信息・機械環境産業部 部長 原 健太郎
https://www5.jetro.go.jp/newsletter/shanghai/2018/180327/1.pdf

2.「待ったなし!環境対策!(中国政府の環境政策と企業の対策)」
上海清環環保科技有限公司 総経理 江頭 利将
https://www5.jetro.go.jp/newsletter/shanghai/2018/180327/2.pdf

3.「中国環境対策動向〜環境NGO IPEとは〜」
SGS 北東アジア・事業開発部 シニアマネージャー 古川 智史
https://www5.jetro.go.jp/newsletter/shanghai/2018/180327/3.pdf

4.「環境問題に関する行政処罰及び訴訟事例について」
上海リーグ法律事務所 弁護士 朱 暁音
https://www5.jetro.go.jp/newsletter/shanghai/2018/180327/4.pdf

5.「ボイラーの環境規制」
三浦工業(中国)有限公司 上海分公司 総経理 山本 孝治
https://www5.jetro.go.jp/newsletter/shanghai/2018/180327/5.pdf

6.「廃水に関する規制」
旭化成(株) 膜水処理事業部 波多野 康弘
https://www5.jetro.go.jp/newsletter/shanghai/2018/180327/6.pdf

7.「土壌汚染規制の最新動向と対応策」
上海化工研究院 土壌環境修復工程技術中心 技術顧問 吉田 憲幸
https://www5.jetro.go.jp/newsletter/shanghai/2018/180327/7.pdf

【中国】早急な対応が求められる環境問題および安全生産問題

一昨日、JETROより「早急な対応が求められる環境問題および安全生産問題」の調査レポートが配信されました。

出典元 JETROホームページ:https://www.jetro.go.jp/world/reports/2018/01/5d81856217ac4363.html

最近ではサプライヤーの環境法令違反による操業停止などで、生産に影響を受けている日系企業からの相談も増えてきました。

JETROのレポートでも、以下のページでその点をピックアップして書かれています。

今までもサプライヤーの定期的な検査は各社行われていると思いますが、サプライヤーの自主申告による調査票での管理や、日本から来られる管理部門の方の訪問検査が一般的でしょう。

日本から来られる管理部門の方では現在の中国環境法令、条令、また地域による特殊な対応など把握できていません。

また、自主申告では検査とは言えませんね。

どこも検査しているつもりでいただけで、実際は現状把握はほとんどできていなかったのではないでしょうか。

法令、条令、また現場を把握した専門家でなければ正しい検査は行えません。

当社では毎週何件ものご相談が舞い込んできますが、訪問させて頂き問題が無い企業の方が少ないのが現実です。ほとんどは自覚症状の無い状態で何らかの法令、条令に違反されておられます。

昨年、私がサプライチェーンの危機について作成したレポートを以下にて公開致します。

PDF版は以下タイトルをクリックしてください。

新環境保護法施行に伴い増大するサプライチェーンに潜むリスク(TIGIIC)

【中国】環境規制対策セミナー

昨日、3月21日にJETRO上海主催にて環境規制対策セミナーが開催されました。

当社総経理の江頭も、「環境保護税と日系企業のあるべき対策」と言うテーマで講演させて頂きました。

予定の定員は70名でしたが、昨日は120名を超える方が来られていました。

厳しさを増す環境規制に対して、日系各社も真剣に向き合おうとする動きが感じ取れます。