【中国】中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議(四中全会)を終えて

2019年10月28日から31日まで、北京にて中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議(中国共产党第十九届中央委员会第四次全体会议)が行われました。

中国ではこのような会議で明確な方針(グランドデザイン)が示されますので、中国の事業家などは、最も注視している会議となります。

今後どのような分野に国が力を入れるのかが示されますので、企業は今後の事業戦略構築の指針としています。

重要な指標が示されるのですが、中国関連事業を行っている日本企業は全体として反応が鈍いのが実情でしょう。

今回の会議でも明確な方向性が《中共中央关于坚持和完善中国特色社会主义制度 推进国家治理体系和治理能力现代化若干重大问题的决定》にて示されています。    環境 規制 省エネ 日系

原文 ⇒ http://www.gov.cn/xinwen/2019-11/05/content_5449023.htm

この中では、生態環境(環境保護、省エネなど)についても、明確に書かれています。

15の重要項目の中の一つとして【坚持和完善生态文明制度体系,促进人与自然和谐共生】の項目で4つの方針が示されています。

今回、この方針の中で省エネに関しては踏み込んだ内容で書かれています。

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(四)严明生态环境保护责任制度。建立生态文明建设目标评价考核制度,强化环境保护、自然资源管控、节能减排等约束性指标管理,严格落实企业主体责任和政府监管责任。开展领导干部自然资源资产离任审计。推进生态环境保护综合行政执法,落实中央生态环境保护督察制度。健全生态环境监测和评价制度,完善生态环境公益诉讼制度,落实生态补偿和生态环境损害赔偿制度,实行生态环境损害责任终身追究制。

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节能减排等约束性指标管理と書かれていますが、これは「省エネや廃棄物削減などの制約性指標を管理する」と言う意味ですが、現在は工場の排気や排水に含まれる汚染物の排出量に関して総量規制が実施されていますが、省エネに関しても総量規制を導入していく事を意味しています。

工場設立時や新たに汚染物を排出する生産設備導入時などには環境影響評価書(表)の書き換えを行わないといけないのですが、その時には工場が一年間に排出する汚染物に関して(排出)総量が書かれています。この総量を超えて汚染物を排出すれば環境法令違反となり行政処罰を受ける事となります。ここ最近でも日系企業の多くが総量規制違反で行政処罰を受けています。

今後は省エネに関しても、年間に排出するCO2(標準炭)量がコミットされ、それを超えると行政処罰とする方向へ進む事と予測されます。※来年度には実施される事でしょう。

ほんの10年前までは「なんでもあり」の状況でしたが、今は厳格な管理体制により法律・条例・規制に則った工場運営が不可欠です。

急激に変化する規制などに事業所も追いつけていない状態があり、現場では混乱が続いています。

まずは、現在の事業所が規制などに適合して運営しているのかどうか、現状のデューデリジェンス(環境DD)を行う事をお勧めします。

当社では直近の1年間では上場企業約50社のデューデリジェンスを実施していますが、まったく問題が無かった事業所は1社のみでした。これが現実です。

【中国】生態環境違法行為の告発 奨励の強化についての指導意見

日本ではあまり報道されませんが、中国の環境規制強化は一段と厳しくなっています。

毎週数件も日系大手企業から当社への相談が舞い込んでいる状況が続いています。

管轄の環境局から指摘を受けたが、どうしたら良いのか?

環境法令違反で行政処罰を受けたが、どうしたらいいのか?

と言った内容が多く、そもそも自らがどのような状態で操業をしているかも把握できおらず、指摘内容も理解できずに右往左往されている状態です。

以前よりブログでも伝えていますが、外部専門家による「現状の環境DD(デューデリジェンス)」を行う事が求めらているのですが、その重要性も理解されておられない企業が未だに多くあります。

即ち、事業所(現地製造拠点)の健康診断を専門医により行い、自らは気付いていない問題点を洗い出して対策を講じる必要があるのです。      SDGS ESG

直近で当社が実施した事業所の環境DD(現状診断)では、50件中で問題が無かった事業所は1件だけです。

95%の事業所が違法状態で操業を続けている状態でした。

未だに多くの企業が環境法令違反を続けている状態を改善する為に、中国政府・生態環境部弁公庁が「生態環境違法行為の告発奨励の強化についての指導意見(パブコメ版)」を公表しました。

その目的は生態環境部WEBに依れば、以下のようになります。
「社会監督を強化させ、住民からの生態環境違法告発を奨励し、告発人の合法利益を保護するために、生態環境部弁公庁は『生態環境違法行為の告発奨励の強化についての指導意見(パブコメ版)』を作成し、生態環境部のHPに公開し、社会公衆に意見を収集する。」としており、「2020年年末までに、全ての市レベルの生態環境部門が環境告発奨励制度を構築すべき。」としています。

http://zfj.mee.gov.cn/dtxx/201908/t20190814_728854.shtml

■今回のパブコメの背景としては、2015年「環境保護法」が改訂されて以降、中国では環境規制が大幅に強化された。近年、上海市をはじめとして中国各地には、環境違反行為告発に対する奨励制度が制定・実施されている。
今回は、この制度の見直しなどを目的としている。

■環境不法行為の告発:
市民は、市街区のいかなる工業企業による環境違法行為を発見した場合いつでも告発可能。
加えて、その違反事実が確認された場合は、奨励金を現金でもらう事が可能。

■告発方法:
電話、ネット投書、正式投書、関連部門に訪問、微信(ウィーチャット)等

■パブコメの総合要求:
目的:汚染の難関攻略を促進し、生態環境問題を解決する。
①物質奨励(奨励金)と精神奨励(栄耀証明書)を結合し、告発人の権利・利益を保護する。
②現時点の奨励制度に基づいて、各地域の現状に合わせて改善する。

■奨励制度を完備する
①利益を目的とする告発行為を合理的に制限する:実名告発。明確的な告発対象・不法行為があること。
②告発の対象行為及び奨励の条件・金額について:各地方はローカルの現状にあわせて、不法行為の程度・社会への影響・発見の経緯等に基づき、奨励の基準を規定することが可能。
③効率を向上させ、告発及び奨励を定着する為の手順を完備すること。

■組織保障及び実施の強化
本意見に基づいて、省級生態環境部門はローカルの現状にあわせて、当地域の告発奨励規定を作成すべき。
市級生態環境部門は省の規定を細分化すること。
資金の確保及び監督管理を強化させる。
情報公開及び宣伝研修事業を推進する。

と言うことで、今後も環境対策に対する市民の目はより厳しくなっていくことでしょう。
実際、現在でも環境保護局が摘発した環境対策違反のほぼ80%は市民からの告発によるものであると当局者の公的な発言もあります。

つまり、自らを律してしっかりと対策を取ることが、自社内部スタッフの意識向上にもながりますし、無駄な軋轢を生むような事が無くなると言えます。
しっかりと環境への取り組みを内部スタッフにも宣言し、より透明性があるしっかりした対策を取っていきましょう。

皆様の対策推進を応援しております!

【中国】上海市省エネ・環保サービス業信用等級

2年に一度、政府の審査員により上海市の省エネ・環保サービス業は信用等級の審査を受けます。

今回、当社は初めて「AAA」の最高等級を頂く事になりました。書類審査、実績審査、審査員による会社訪問審査があり、厳格な評価により等級は決められています。AAAの下はA、その下はBBBなのですが、今まではBBBの等級でした。今回、2段階上がった事となった訳です。   環境       規制

上海市では26社がAAAの評価を受けていますが、その中の1社となった訳です。日系では当社のみです。

【中国】相変わらず改善されない日系企業の環境対策

今週、上海市生態環境局より6月度の環境法令違反企業(者)が公示されました。

URL:http://sthj.sh.gov.cn/fa/cms/shhj/shhj2060/index.shtml

6月は上海市だけで日系企業は4社摘発されており、その内の3社が東証一部上場企業、その他1社も未上場ではありますが売上1000億円を超える大手企業です。     規制

過去からずっと警笛を鳴らし続けていますが、未だに上海市だけでも毎月コンスタントに4~5社の日系企業が摘発されております。

その答えは、一言でいうと中国の環境対策専門家不在での運営でしょう。

私のブログでは、2014年6月14日、2017年2月10日にも外部監査の重要性を説いていますが、メディアなども大きく取り上げない事もあり、皆さん危機感を抱くことなく操業を続けておられるのかと思います。

2014年6月14日ブログ ⇒ http://steco-blog.com/shimizu/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9/1862.html

2017年2月10日ブログ ⇒ http://steco-blog.com/shimizu/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%83%93%e3%82%b8%e3%83%8d%e3%82%b9/2692.html

6月に摘発された東証一部上場企業の各社は、当然ながらホームページを見るとコンプライアンスや環境法令遵守など立派に書かれていますが、実態が伴っていない状態はどこも似たり寄ったりなのでしょう。

6月に環境法令違反で公示された日系企業は以下となります。

・富士达电梯配件(上海)有限公司

・上海普陀吉世科特殊涂装有限公司

・中涂化工(上海)有限公司

・上海宝菱塑料制品有限公司※イエローカード

この中で中涂化工(上海)有限公司は2015年4月から環境関連の法令違反で9件も摘発されており、上海宝菱塑料制品有限公司は2015年9月より6件摘発されています。

法令遵守は上場企業として当然の責務ですが、長く改善されず未だに繰り返している現状は悲しいです。

どの企業もホームページではコンプライアンスや環境対策など同じような内容で書かれていますが、問題は監査体制にあります。

また、多くの企業はISOを取得し、毎年審査を受けているので大丈夫だと思われていますが、当然ながら毎月摘発されている日系企業のほとんどはISOを取得されています。

中国事業所での環境対策とISOは何ら関係ない事を認識してください。

過去のブログでも書いておりますが、会計に関しては上場企業は監査法人により厳しい監査を受けますが、環境・安全・衛生に関しては内部監査しか行っていない企業がほとんどです。

中国(海外)では日本国内と法令・条例・規制も異なりますので専門家でなくては監査は無理なのですが、未だに多くの企業は内部監査しか行っていません。

まず日本側の専門家では役に立ちません。中国内に自社で専門家を雇用されているケースもありますが、本当に専門家でしょうか?

会計では当然ながら自社内にも専門家はおられるはずですが、なぜ外部の専門家(監査法人)により監査を受けるのでしょうか。単に上場企業のルールで決められているからでしょうか?

当社へのご相談も最近では現地法人からではなく、本社の法務・コンプライアンス部門から直接ご相談を頂くケースが増えてきました。

風向きが変わりつつあります。

上海市省エネ環境サービス業信用評価

毎年、上海市政府が管理監督する上海市省エネ環境サービス業協会に於いて、省エネサービス企業の信用評価を実施しています。※「上海市节能服务企业信用评价」

今回の信用評価に於いて、当社は最高評価のAAAを取得致しました。

公開HP→http://www.emcsh.org/article.php?name=20190719152557

25番目に当社(上海清環環保科技有限公司)が記載されています。26番目は上海電力の省エネ子会社です。

こつこつと実績を積み重ね、初めて最高評価を頂く事ができました。

実績、適格条件の書類審査、会社へ評価委員が来社され様々な質問や確認を行い評価が決められます。

【中国】環境コンサル

日本本社側で経営層の方とお話をしていると、中国事業所でついては「弊社は環境コンサルタントに依頼し、サポートしてもらっています。」と言われる事がおおくあります。

「そんな多くの環境コンサルは中国に無いはずだが」と、いつも違和感を感じています。

多くの皆さんが言われる「環境コンサル」とは何の事なのか、どうも私と理解が違っているのではないかと疑問に思い、少し整理してみました。

上の図に登場するのが中国に於いて環境対策を取る場合に関係する人物(機関)一覧となります。

右側民間企業の①の事を多くの皆さんが「環境コンサルタント」だと思い込んでいるんです。これが大きな間違いなのです。

彼らはあくまで資料を作成してくれる国家資格を有する民間企業にすぎず、日本で言うならば「環境専門の行政書士」当たりが良いところでは無いでしょうか。

コンサルタント、コンサルティング会社だから「助けてくれる人たち」だと理解してしまっているのでしょう。

たしかに「助けてくれる人たち」ではありますが、日本人が抱いているようなサポートをしてくれるわけではありません。

「環境F/S(環境影響評価)作成業者」が担う仕事は、あくまで環境に影響を与えるであろう事項を確認し、それを書類として作り上げ、お墨付き(技術的に認証する)を与える事であり、各工場の問題点や課題等を抽出し、改善の指導や、設備の適不適を指導するものでは無いのです。

本社側の認識では、コンサルに依頼しているから「各工場の問題点や課題等を抽出し、改善の指導や、設備の適不適を指導してくれている」と思っているようですが、これは大きな勘違いです。

上述したように、多くの日本企業が依頼している環境コンサルは、環境F/S(環境影響評価)作成業者のことであり、彼らは各工場の問題点や課題等を抽出し、改善の指導や、設備の適不適を指導するものでは無いのです。

今年に入ってから当社がサポートさせて頂いた企業は以下のような状況です。

この中で法令・条例などに適合して適正な運営をされていいた企業は1社だけでした。

43社中、42社は違法状態で運営をされておられましたが、ほとんどの企業は「自覚症状」はありませんでした。

まずは、事業所の現状診断を行う事が重要です。その上で問題点を正しく認識し速やかな対策を講じる事をお勧めします。

中国におけるコンプライアンスの最新課題

「MIZUHO CHINA MONTHLY」の6月号にて環境も含めたコンプライアンスに関する情報が配信されました。

情報元:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/economics/monthly/pdf/R512-0117-XF-0105.pdf

法務では、「中国におけるコンプライアンスの最新課題」について西村あさひ法律事務所の野村弁護士(上海事務所代表)から寄稿されています。

以下、ポイントと思われる記載となります。

これまで、環境問題は主に、法令上の環境基準をいかに満たすかという技術的な問題であるという見方が強く、そのため日系企業の社内でも、技術系の人員が環境問題を担当するケースが多かったのではないかと思います。ただ私が最近感じるのは、中国における環境問題は法令上の環境基準を技術的にどう満たすかという問題に止まらず、コンプライアンス上の問題も内包しているのではないかというものです。

環境問題がコンプライアンス問題でもあるというのには、二つの側面があると思われます。一つは、会社が環境問題で法令違反となり、行政処罰を受けるような事態は、法令遵守という意味でのコンプライアンス上の問題であるというものです。もう一つは、環境問題対応の社内プロセスにおいて、様々な不正行為が潜在していることがあり、それを防止するという意味でのコンプライアンス問題です。

中国での環境規制の厳格化と当局の調査・処罰の強化の流れのもと、中国の大手企業では、専門の環境担当を置いて、中央及び現地の環境保護局の動向をウォッチしたり、当局による調査に積極的に対応したりしています。当局の担当者ともよくコミュニケーションを取り、現在は当局がどの分野・地域にフォーカスして重点的に取り締まろうとしているかを把握しようと努め、環境保護の面での当局対応に力を入れているわけです。他方で、多くの日系企業では、技術系のスタッフが環境問題を兼務して付随的に担当しており、数多い環境法令の改正情報の収集で手一杯となっていて、上記のような当局対応まではカバーできていないケースも多いのではないかと思います。

メーカーの工場が環境保護対策を取る場合、環境規制に対応するための機器・装置の交換や新規購入が必要となることがよくあります。このような機器・装置は、非常に高額であるにもかかわらず、社内の環境担当者が実際上単独で選定しているケースが少なくないようです。特定の人物が長年にわたって担当している場合に、それが既得権化してしまい、外部の業者との癒着やリベートのやり取り等が生じ、相見積もりを取らなかったり、複数の業者と通謀して形だけ相見積もりをとったことにするケースも見られるようです。環境保護対策が社内不正の温床になっているわけです。

まずは、会社が環境問題対応のため購入している設備が、そもそも要求される環境基準に照らして必須のものかどうか、及び代替できる機器・装置との機能・価格の比較などを、外部専門家の知見も利用して行うことが考えられます。

中国および京津冀地域における環境規制と企業の対応

ジェトロ・北京事務所より【中国および京津冀地域における環境規制と企業の対応】の調査レポートが配信されました。

前半は詳しい法令や処罰の統計など書かれていますが、後半の「環境処罰と企業対応」では日系企業としてどのように対応すべきかなど書かれています。

出典:https://www.jetro.go.jp/world/reports/2019/02/4db7ee91fe5509f7.html

以下、気になったポイントを抜粋します。

処罰による波及効果として、マスコミ報道、環境 NGO の不買運動、信用低下で融資困難、株価低下、取引先減少、周辺住民の苦情などの動きも起こり得るため、注意が必要である。

日系企業への影響としては、地方役人の態度が変わり、環境規制への対応を厳格に求めるようになった。またサプライチェーンが寸断、経営を圧迫するようになった。

3-1-7.なぜ日系企業が環境処罰されるのか

・環境管理を行うのが現地職員

日本人駐在員で環境管理が分かる人が少ない

・中国環境制度の特殊性を理解していない

中国の急激な変化に追いつけない

企業側としては、当局の立入検査、担当者への審問、担当者への告知の各段階で当局の動きを把握できるはずである。ただしこの段階の情報は環境部内で留められ、処罰決定後に初めて経営層に報告されるケースが多い。これにより対応が後手に回る。このためできるだけ早期に当局の動きを把握して対策するのが望ましい。

3-2. 昨今の環境規制に対応するための日系製造業の留意点

②自社の環境対応の実態把握

③本社側からの環境対応サポート

各社は ISO14001 管理の一環として環境規制情報を収集・管理しているが、漏れがあるケース、更新されていないケースが多い。環境規制情報について、自社に都合のよい解釈をしているケースもみられる。一つの法規をみるだけでなく、体系的な理解が望ましい。罰則から読みと強制規定を早く把握できる。環境規制の日本語への翻訳で意味がゆがむケースもある。社内の通訳は一般に環境専門外であるためである。

自社の実情把握が企業環境管理の基本中の基本であるが、これは意外に難しい。環境担当ローカルスタッフに任せていて、環境管理の実態は日本側からブラックボックスになっているケースが多い。長期駐在の日本人は経営層・生産管理が主であり、環境管理が分かる人は少ない。また本社や地域統括会社から環境専門職員が監査診断に来るも、現場に緊張感を持たせる効果はあるが、中国の制度・やり方への不理解や言語の問題から、効果的監査ができないケース
が多い。

法令順守では「自己満足、思い込み、自社に都合よい解釈、日本の対策で十分」に要注意であり、法令基準より厳しめの自社管理基準を運用することで予防できるほか、専門的な第三者企業による監査診断/指導が有効であると思われ。なおローカルの環境コンサルティング会社は主に、環境アセスメント、排出許可証など環境手続きに限られるケースが多い。 よくある誤解として、「ISO14001 取得済み、当局の立入検査の指摘に対応済み、日本式管理を導入した、環境投資が多額であるため、対応できている」という日系企業でも環境処罰事例が相次いでいる。ISO14001 はあくまで社内環境管理システムの運用状況に焦点が置かれており、環境法令順守はそのうちのごく一部でしかなく、環境法令順守を担保するものではない。

3-2-5.本社側からの環境対応サポート

本社側からの環境対応サポートとして、正しい危機感を持ち、人的、資金的、知識的にサポートすることが重要である。その際に、次の点に留意する必要がある。

現場の環境管理は、環境専任日本人がほぼいないため、環境担当ローカルスタッフに任せることになるが、完全に任せきりだと「なあなあ」が積み重なる。環境担当ローカルスタッフの性格・知識・能力を把握しておく必要がある。環境部門は少人数で特殊な専門性が求められるため、社内他者からのチェックが少なく、トラブルのもとになりやすい。現地職員の知識・能力に不安な場合、日本の熟練職員や外部第三者コンサルタントを派遣して時々チェック、講習するのがよい。環境担当は往々にして孤立しがちであり、横のネットワークを作るよう支援するのが望ましい。ローカルスタッフは眼前の業務対応に集中しており、全体像、意義、技術原理など理解していないスタッフが多い。

性悪説に基づきクロスチェックできる体制を作るのが望ましい。

【中国】誤解を招く報道

本日、NNAより以下のニュースが配信されました。

この記事を読むと、環境法令違反などあった場合でも工場の即時停止などの措置は取られないと勘違いしてしまいます。タイトルから見れば誤報と言えるでしょう。

本件についての中国側報道 ⇒ http://www.xinhuanet.com/politics/2019-04/01/c_1124311430.htm

生態環境部の報道官は、無秩序(乱暴)な生産停止措置は行わないと言っただけで、環境法令違反があった工場の生産停止措置を行わないとは言っていません。

昨年の8月に生態環境部が明確な方針として「一刀切」の禁止を発表していますが、この「一刀切」と言うのが無秩序(乱暴)な工場生産停止措置などを言います。

地方政府が工業園区などに対して一律に生産停止措置を行っていた行為を非難し、法令法規を正しく守って生産活動をしている工場に対しては根拠なく生産停止などの措置を行ってはいけないとの指針を示しています。※爆発事故などが発生し、その周辺工場に対して安全の為に緊急に生産停止措置を取る場合はあります。

中国側報道を見てみると、「加大典型案件曝光和问题督办力度,保持压力传导,继续督促地方党委政府及其有关部门落实生态环保责任,巩固攻坚成果。对于环境问题突出、问题数量集中、措施落实不力的地方党委政府定期通报、当面交办,确保压力传导到位、突出问题得到解决。」と書かれており、要するに地方政府などは環境対策に対して圧力を緩めるなと言っています。

生態環境部は「ゼロ容認」の方針も明確に打ち出しており、これは違反があった場合には決して見逃さない、厳しく処罰するとの方針です。

従って、本日のNNA記事では「環境法令違反があった工場でも生産停止措置を行わない」と勘違いしてしまいますが、決してそうではなく違反があった場合は厳しく処罰され、操業停止などの措置が取られます。